カリウムも、欠乏と過剰でそれぞれ異なる問題を起こします。しかし今日の日本では、カリウムは欠乏よりも過剰を起こさないように注意するべきです。それは生育だけでなく、品質にも大きな影響を与えます。
カリウムは欠乏よりも過剰に注意
さて、カリウムの営農上の課題ということを考えた場合、今日の我が国では一般に欠乏よりも過剰害に注意する必要があります。
カリウム欠乏は古い葉の周辺から始まる症状があり、それはわかりやすいものです。どうなるかというと、葉の周囲を縁取りするように緑色が抜けてきて、やがて黄褐色になり、それが明確になってきます。この症状が、古い葉からだんだん新しい葉に移行していきます。
しかし、こうした症状は現在の日本ではあまり見かけないものとなっています。むしろ過剰のときの症状を知ることが必要です。
カリウム過剰の作物はどうなるかと言うと、全体がどす黒い感じになります。そして、通常植物は先端は淡い緑色で下の方の古い葉は濃い緑色とかというように、部位による色の違いがありますが、それがなくなります。
カリウムの贅沢吸収
また、カリウム成分の特徴として他の成分ではないことがあります。それは、作物はカリウムがあればあるだけ吸収してしまうということです。「カリウムの贅沢吸収」と称されています。これはぜひ知っておいてください。
これが困るのは、商品として流通したとき、腎臓病を患っている人などカリウム摂取が制限されている人にとって問題となるということです。
問題は他にもあります。と言うのは、作物がカリウムを過剰に吸収するということは、カリウム肥料の与え過ぎや土壌中にカリウム成分が多過ぎることに外なりません。これは、実はマグネシウムやカルシウムのような大事な成分の吸収を大きく阻害することに直結しているのです。
これは栽培上も問題ですが、やはり商品としての問題にもつながります。私たちが野菜を食べることの意味は、カルシウムやマグネシウムなどを摂取することにもあるわけですが、カリウム過剰な野菜等の作物は、それらの成分が不足ぎみになるということを意味します。
このように、野菜の作物としての健康度は私たちの食べる場面での健康度にも深く関係するはずのものです。
産・消ともに作物の栄養の理解を
そのように重要な問題が、生産者の知識、技術、思い込みなど誤った理解、仕事に対する姿勢などによって大きく左右されてしまうということには、生産者も需用者もよく注意を払っておくべきでしょう。
もちろん、誤った栽培の繰り返しは、土の状態にも影響し、その結果は土壌も正直に返してきます。
逆に、土壌の状態や作物の出来具合は、生産者の知識、技術、姿勢を表すということでもあります。流通業、小売業の人が、作物の栄養や土壌も理解すれば、当然生産者もより研鑽を積んでいかなければなりません。作物の生産・流通・販売にかかわるすべての人が熱心に勉強することが、よりよい連携を生んでいくはずです。